現実逃避日記

おもにゲームの事について書いていこうと思います

【ポケモンSMストーリー考察】 ~サンムーン主人公は誰なのか~

巷では今作はリーリエが主人公、プレイヤーはリーリエの戦闘代行人などと揶揄されることもあるサンムーンのストーリー、皆さんは楽しめただろうか?自分はポケモン本編シリーズの中では一番ストーリーを楽しめた作品だったが、今作が合わないと感じた人も少なくないようだ。今回はサンムーンのストーリーを主人公のあり方という点から色々と自分なりに咀嚼し考えてみようと思う。

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 演出が技術的にあまり凝れなかった昔のゲームと違い、脳内補完だけでロールプレイをするのは難しくなってきている。

NPCが思い思いにドラマを展開する中、プレイヤーの分身となるキャラクターが浮きがちになってしまうのはよくある問題点だ

勝手に喋らない主人公を如何に主人公として活躍させるかはこの手のゲーム共通の課題と言えるだろう。

マルチエンディング方式のような主人公が自ら物語の筋道を選択していくゲームは主導権を握りやすいが、その手のゲームは周回前提になりやすくポケモン本編との相性は非常に悪い

 

まず前提として、ポケモンの主人公のような無数のプレイヤーの分身の役目を背負ったキャラクターに、プレイヤーの意志に反する勝手な行動を迂闊にさせることは出来ず、結果としてプレイヤー自身の行動が物語を左右するマルチエンディングのような方法を取らない限りこのタイプの主人公が物語の主導権を握るということ自体、非常に難しいという事を踏まえたうえで考えてみてほしい

 

喋れない主人公のゲームでストーリーを重視しようとすると代わりに物語の主導権を握るキャラクターが自然と出てくるもので、その中でリーリエの成長と活躍というのは印象に残りやすいが、よくよく考えてみるとリーリエが関わってくる話はゲームの後半からで、プレイヤーの目標である島巡りに関してほとんどリーリエは関係しない。

優しい大人達の庇護の元進んでいくメレメレアーカラ島の島巡りから

自身のポケモン達のみとスカル団と戦ったり、全く違う性格の集まりでありながら共に成長し、お互いを認め合っていく主人公、ハウ、グラジオの3人でエーテル財団と戦っていく少年漫画のような展開のウラウラ島

厳しい大自然の中、試練すら無人で行われることで、冒険感が増すと同時に島巡りのオリエンテーリング感が一気に消え、支えてくれていた大人たちから自立し自身とポケモンの成長を実感させてくれるポニ島の4つの起承転結はっきりとした島を巡り、最終的にアローラのチャンピオンにまで成長するストーリーの主人公は間違いなくプレイヤー自身である。

確かに後半の重要な話の中心はリーリエであったが、必要以上に主人公としての役目を奪わないよう注意が払われているのを感じたし、そのリーリエの活躍も側に主人公という大きい存在が常にいてくれたこその成長でもある

リーリエがストーリーが終わるまでトレーナーにならなかったのも主人公達トレーナーの役目を奪わないためでもあるだろう

 

この起承転結はっきりとした構成というのがポイントで、今までのポケモンはバッジを8個集め、途中で悪の組織を倒してチャンピオンに...という流れで主人公の活躍や成長を描いてきたが、果たして本当にそれで主人公の成長は描けていたのか?という部分は疑問である。

負けイベント等もなく、基本ストーリー的にはライバルにも悪の組織にも負けなしで進んでいき、リーグ制覇まで達成する主人公(ジム戦は負けていてもストーリー的に矛盾は少ないが)は最初から最後まで才能に恵まれた強い人物であり、負けを通して成長するライバルなどと比べてもドラマ性に非常に欠けるものであり、明確に主人公の成長を描いたイベントがあったようには思えない。

フィールドもジムがある場所は基本人の少なくはない街や村に限定され、序盤はともかく旅を続けても明確な変化、終盤のジムも中盤のジムもあまり大差ないようにすら感じてしまう節があった。

今回の主人公の場合は、優しい大人たちやキャプテンに守られながら進むというある意味生温い環境から徐々に大人達の手を借りず冒険していくウラウラ、ポニと大きく前半と後半で主人公を取り巻く環境が変化している

特に最後の試練が無人で行われシンプルな内容というのはジムじゃ絶対できなかった芸当で、確かに少し物足りないと思う人も多いと思うがこれは意図されたものだと自分は思っている。

この環境の変化を今までより強く描写することで、セリフ等で成長を語れない主人公の成長をしっかり描けたポケモン本編初めての作品なのではないだろうか。

サンムーンは旅やポケモンを通してそれぞれ成長していく少年少女の物語であり、プレイヤーもリーリエも(ハウとグラジオも)それぞれ違った大きな役割を持つ主人公であり、その全ての中心にいるのがプレイヤーである。

他に伝統と守り神ポケモンに振り回される人々だとか伝統を受け入れつつも変えていこうとするククイ博士だとか、危険生物のUBとの共存だとか色々な要素もあるのだがメインストーリーとは少し脇道に逸れる話題なので割愛する

 

とはいえ後半の一番印象に残る部分の主役はやっぱりリーリエだし、一見するとリーリエが主人公に思えても仕方ないかもしれない。もっと主人公を立たせるように描くことは出来なかったのだろうか。

自分が以前プレイしたゲームの中で、喋らない主人公の典型的な失敗を犯しつつ、追加エピソード版で喋らない主人公でストーリーを盛り上げることが出来た面白い成功例として、GOD EATERというゲームがある。

 

ボイスが何十種類も選べるキャラメイク系の主人公であるその作品では、当然全ての声で辻褄の合うようなストーリーも収録も出来ない為ストーリー中は一貫して空気で、物語の主導権は別のキャラクターが握っていた。

が、やはり不評だったらしく、追加エピソード版ではムービー中に率先して仲間を助けるため動いたり、ストーリーの重要な局面では一セリフだけだが、あろうことか喋る。

本来プレイヤーの意思から離れた勝手な行動というのはご法度であるが、プレイヤーの意思とシンクロした行動であるなら派手に動いても違和感が少ないという好例だろう。

逆に言えば、喋らない主人公を喋らせるくらいの事をしない限り、主人公でストーリーを盛り上げるのは難しいとも言えるだろう。

サンムーンはムービー中の主人公の勝手な行動はおろか、表情すらついていない。

演出などが技術的な面で凝れない時代なら主人公の行動は脳内補完で補えばよかったが、演出面が向上すればするほど何も行動しない、表情も付かない主人公はかえって違和感が大きくなってしまう

かといって主人公が動けるのはプレイヤーの意思とシンクロしたときのみで、例えばリーリエが好きになれなかったプレイヤーが操る主人公がムービー中にリーリエを助けたりしたら今以上に反感がありそうだ。

結局主人公とポケモンの成長を描くなら今まで通りリーグ制覇等で、セリフや行動で語られずともプレイヤーがロールプレイ出来るかどうかということにかかっている。

ポケリフレや仲良し度によるバトル中のちょっとした演出などで、実はポケモンのロールプレイは今まで以上にやりやすくなってきているはずなのだが、しかし ロールプレイを積極的に行わない、アニメ感覚でストーリーを追いかけている層はプレイヤーキャラクターやそのポケモン達の成長を実感する事が難しいのかもしれない

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ポケモンと触れ合えるだけだったパルレから戦闘後のケアという意味が出てきたリフレで今まで以上に"トレーナーやっている感"が増した

 ロールプレイ 脳内補完が必要になってくるタイプの主人公と、固有の人格がありドラマチックにストーリーを展開できる主人公、そのどちらも存在しているとも言える今作

どちらかがもう片方の活躍を奪っているというより、お互い自分には出来ない役目を担っていると捉えるべきなのだろうが、やはり分かりやすさが違う分印象には差がついてしまうのか

 

そういった事もあり、ムービー中に一切行動しないサンムーン主人公だが、かといってプレイヤーの意思に反する行動をしていないかと言われると実はそうでもない

例えばベッドを調べたら勝手にそこで寝転がって感想を述べたり、11歳とは思えない語彙力の食レポなど...

ベッドマニアキャラなんて付けるんだったら表情くらい付けても良かったのでは

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主人公の扱いに神経質なのかキャラ付けしたいのかどっちなんだ..

 

 

結論

表情までないのは流石に極端だが、勝手な人格を持てず、ストーリーを重視しようとするとどうしても主人公として描くのが難しいプレイヤーキャラクターを起承転結はっきりとした4つの島を舞台にすることで描写していて、喋らない、行動しないという厳しい制約の中でプレイヤーは十分主人公として頑張ってたと思います。

それ以上にキャラが立っている人物も多いけれども、むしろ主人公としてのプレイヤーという表現はこうして考えてみると意外にも歴代のポケモンシリーズでも丁寧に作られているのでは?

ムービー中などでのプレイヤーキャラを活躍させる演出は非常に難易度が高いと言えるのだが、ただマイチェン版では表情くらいは付けて欲しい。

付いた表情がプレイヤーの感情と必ずしも一致するとは限らないが、無表情だからといってプレイヤーの感情を代弁できるわけではない。

ストーリーを一切弄らなくても表情付けるだけで結構印象変わりそうだと思うので次回作に期待したいです。